チャプレンメッセージMessage from the Chaplain

2025年04月01日掲載

 新年度が始まりました。チャプレンとして、新入生の皆さん、進級される上級生の皆さんを改めて香蘭で歓迎いたします。共に新しい門出を祝いたいと思います。

 さて、2月と3月に続き、今回も4月の聖人を紹介いたします。4月13日に記念日を迎えるカステロの聖マーガレットです。

 私たちは「裏切り」がどのようなものであるかをよく知っています。裏切りの行為は、人を傷つけることに無神経です。何故そんなことが出来るのかと疑いたくなります。

 裏切られた人は心に大きな傷を負います。信頼関係に対して、人の安全に対して、人の心に対して無神経な振る舞いは人を傷つけます。その痛みは、目には見えなくても現実のものです。裏切られた痛みは、人の心を歪ませ、疲弊させ、人間不信に陥らせ、みじめにします。しかし、道はあります。

 カステロの聖マーガレットは、心を歪め、疲弊し、人間不信になり、みじめになる理由が十分ありました。しかし、彼女は心から人を愛し、人に尽くし、命の喜びを体現しました。イタリアで生まれたマーガレットは生まれつき盲目で、重度の身体障害もありました。両親は彼女を恥として、何年も彼女を世間から遠ざけました。彼女はネグレクト状態で幽閉されていたのです。そして、6歳になると両親は北イタリアのカステロにある教会の一室に彼女を置き去りにしたのです。

 彼女はどう反応したでしょうか。知らない村で村人たちに心を尽くして接したのです。村人たちも彼女を受入れ、年齢に達するとマーガレットはドミニコ会(カトリックの修道会)に入り、リーダー的立場になりました。幼少期に受けた仕打ちに、彼女は決してひねくれることはありませんでした。逆に、彼女は弱い者に寄り添い、とりわけ病にある者、貧しい者、差別された者に手を差し伸べました。

 カステロの聖マーガレットは、如何に無神経に裏切られたとしても、闇の中ではなく、光の中を歩む道はあるという真理を証ししています。私たちも裏切りや人間不信に直面しても、目の前には2つの道があることを心に留めたいと思います。心の痛みを嫌悪感や恨みに換える道と、その痛みゆえに、より人に共感し心を寄せて生きる道です。


香蘭女学校チャプレン  マーク・ウィリアム・シュタール