チャプレンメッセージMessage from the Chaplain

2021年02月01日掲載

ハーストーリー(Her-story)


日本には他の国とは違う日本だけの元号を使う伝統が受け継がれ、2年前からは令和の時代になりました。世界の殆どの国は、年を記述したり数えたりする際に西暦というものを使います。そして、西暦とそれ以前の年々を分けるために「紀元前」と「紀元後」という表現が一般的に使われています。ところが、紀元前と紀元後を分ける「紀元元年」の基準となるものは何なのかご存知でしょうか。それはイエス様です。イエス様が生まれた年より後は「紀元何年」で、それより前は「紀元前何年」となります。これを通しても私たちは、世界歴史、特に西欧世界においてイエス様の影響がどれほど大きなのかを知ることが出来ます。そういうこともあって、歴史を意味する英語ヒストリー(History)のことをHisとstoryに分けて、ヒストリーとは彼の物語(History is His story)であり、ここで言う彼はイエス様のことだ、というふうに解釈する人もいます。これは言語学的には正しくない解釈のようですが、そのくらいイエス様が世界と人類に残された痕跡が大きいということを表していることだと思います。

ところが、多大なる影響をこの世に残したイエス様とても、それを一人で成し遂げたのではありません。多くの協力者がいたから出来たわけです。とりわけ洗礼者ヨハネと呼ばれる人もその一人です。「あなたより先に使者を遣わし、あなたの道を準備させよう」(マタイ福音書11:10)という聖書の預言の通り、彼はイエス様より先に、イエス様が歩むようになる救いのための花道を整えました。そしてイエス様は、彼が準備しておいた道を歩むことを通して、人類のための救いのみ業を成就されたのです。近代中国を代表する小説家で思想家、魯迅(1881-1936)は『故郷』という著書で“本来、土地の上には道というものはなかった。誰か一人が先に歩いてから、その後、歩いていく人が多くなると、それがまさに道になるのだ”と述べましたが、洗礼者ヨハネはイエス様のために最初の道を整え、イエス様はその道を通して救いの道を開くことによって道そのものになり、その後2000年に渡って沢山の人々がイエス様という道を通して救われるようになったのです。

香蘭生である皆さんは今、約130年前にビカステス主教が開かれた道、そしてその道を歩まれた沢山の先輩たちによって形作られた歴史ある道の只中を歩んでいます。皆さんもまた、これからの後輩たちが誇りを持って歩める道となることでしょう。卒業の後のことに対しても同じことが言えます。皆さんは誰かによって整えられた道を歩み、また誰かのための道になれるわけです。人によっては先達たちの道をより良いものにするようになり、人によっては新しい道を開拓するようになると思います。どのような道を歩むようになるとしても、皆さんだけのヒストリーを、いや女性としての皆さん自身のハー(Her)ストーリーが創れますように願います。ひとり一人自分だけの新しい歴史としてハーストーリーを創ってください。自分自身のストーリー、ハーストーリーのために、今、自分という道を頑張って整えている皆さん一人ひとりに、神様の祝福が豊かにありますように祈ります。


香蘭女学校チャプレン  成 成鍾