チャプレンメッセージMessage from the Chaplain

2021年11月01日掲載

光に顔むけよ


 「努力は尊重されるべきであり、絶望から出発しなくても成功に至ることはできる。失敗を重ねても、退歩しているかのように見えても、やっている事が最初の思い通りに進まなくても、また元気を出し、勇気を出さねばならない」(「ゴッホの手紙」から)。


 季節は間違いなく変わり行くものです。日中と朝晩の温度差が急に激しくなり、秋を楽しむどころか冬支度をしなければと思うこの頃です。少しずつ冬を迎えようとしている自然から学ぶことの多い季節です。「主よ、御業はいかにおびただしいことか。あなたはすべてを知恵によって成し遂げられた。地はお造りになったものに満ちている。」(詩編104:24)という聖書の言葉通り、自然は大切な「テキスト」です。静かに留まって謙虚に耳を傾ければ、自然はわたしたちに知恵を、また神の御心を聞かせてくれるのです。

 テストが終わり、下校している生徒たちの笑い声が、急な寒さでうら寂しくなっていた街に生気を取り戻しているようです。しばらくでも重荷を降ろして気持ちが軽くなったことでしょう。でも、きっと頑張った甲斐がなくてがっかりしている生徒もいると思います。ただ一回の結果に一喜一憂しないでほしいです。


 留学先からしばらく帰国した学生たちに会い、今までの経験を聞かせてもらいました。この秋から海外留学に行くという連絡もありました。コロナ禍の厳しい状況の中で、見知らぬ世界での生活が心配でもありますが、あきらめずに夢をかなえるため自分の人生を企画し、チャレンジする若者たちの覇気が美しいです。

 遠く旅立つ若者たちにたまに聞かせる話があります。インドの聖者「スンダル・シング」(Sundar Singh, 1889~1929)の逸話です。ヒンズー教徒だった彼は、ある日、幻の中でイエス様に出会い、その後イエス様の弟子となり、ヒマラヤの雪山を登って行き来しながら福音を伝えて一生を送りました。年老いた彼は誰かにこう聞かれました。「健康状態も良くないのに、どうして酷寒に耐えて山を登ることができるのか」と。正確な文章は覚えていませんが、それへの答えは大体次のような言葉だったと思います。「山に登る前に精神の高さを山より高めておけば、十分登れる。」


 若者たちがいじけることなく堂々と生きていける世の中になってほしいです。でも、そのような世界は、誰かに造ってもらうものではなく、自分で造っていくべきものです。心を引き締めて、目標に向かって堂々と突き進んでほしいです。

 冒頭に引用した「フィンセント・ファン・ゴッホ」の言葉のように、今やっていることが思い通りに進まなくても、何度もの失敗で退歩しているかのように思われても、確かな想いや目標があれば崩れることはありません。何かを目指していれば、それ自体が勇気です。今の失敗くらいは笑い飛ばすことができ、その笑い声が闇の中で苦しんでいる人たちに勇気となるように。

 「暗闇行くときには、主イエスが示された、輝く星をもとめ、光に顔むけよ、光は闇を照らし、昼は夜をつつむ、とりまく影をぬぐいて、光を仰ぎ見よう」(聖歌476番)


香蘭女学校チャプレン  金 大原