チャプレンメッセージMessage from the Chaplain

2024年07月01日掲載

¹⁴ 私が地の上に雲を起こすとき、雲に虹が現れる。 ¹⁵ その時、私は、あなたがたと、またすべての肉なる生き物と立てた契約を思い起こす。大洪水がすべての肉なるものを滅ぼすことはもはやない。 創世記9:14~15


 例年より遅い梅雨入りとなりました。梅雨の後には猛暑、そして台風の季節もやってきます。近年は毎年のように世界規模で異常気象が発生していて、干ばつ、洪水、竜巻、山火事など各地で深刻な被害が起きています。この気候変動は我々が直面している差し迫った問題です。先史時代は、人間は天災に限らず多くの危険にさらされ、毎日が生き残るための闘いでした。ですから、異常気象にもそれほど驚かなかったかも知れません。しかし、文明社会を築き、より安全な場所を選んで定住が進むと、「なぜ」このような災害が降りかかって来るのかを考えるようになります。原始的な宗教儀式も多くは占いや予言のためでした。聖書のノアの方舟の物語もその延長線上にあると言えるでしょう。旧約聖書の創世記に書かれている物語ですが、厳密にはノアの方舟は神学的な話ではありません。その起源はバビロニアの神話にあって(紀元前6世紀頃、バビロン追放の際に持ち込まれたと考えられます)、人々がなぜ自然災害が起こるのかを理解するのに役立ちました。当時は、嵐や洪水などの災害は、神様の怒りの表れで、人間に下される罰だと受け止めるのが普通でした。そして当然ながら、この怒りの原因を人々は探りました。誰かが、あるいは民族が何か悪い行いをすれば、必ず天災がやってくるというのが一般的な理解でした。ノアの方舟では、神様は堕落した民に対する怒りで大洪水を起こし、方舟に乗った者以外すべての命を滅ぼしました。しかし、その後、神様は空に虹を架け、二度とこのような災害を起こさないと約束します。この厳粛な約束の象徴として、神様はあらゆる自然現象の中で最も美しい虹を与えてくださったのです。ならば、私たちは神様の怒りによってではなく、人間の傲慢とどん欲によって世を滅ぼしてはならないことを肝に銘じないといけないでしょう。自然も平和も私たちが守っていかなければなりません。


香蘭女学校チャプレン  マーク・ウィリアム・シュタール