チャプレンメッセージMessage from the Chaplain

2024年12月01日掲載

SILENT NIGHT


み言葉:不当に扱われている人を不当に扱う者の手から助け出せ。裁くときには弱気になるな。 シラ書4:9


 今、世界はどんどん受容力のない、寛容性のない、許す力の乏しい世界になってきていると感じます。自己中心的、排他的な空気に覆われ、他者に対する無理解、憎しみが増幅しています。あちこちで出口の見えない悲惨な戦争、紛争が起きています。本当に心が痛みます。

 ちょうど206年前に少し似た状況がありました。ある小さいオーストリアの町です。12年にもわたるナポレオン戦争により、この町の政治的、社会的インフラが破壊されていました。1818年のクリスマスも間近に迫ったある日のこと、追い打ちをかけるように大雨が降り、川が氾濫し、教会のオルガンが水害に遭いました。この教会の司祭はJoseph Mohr(ヨセフ・モーア)という人でした。モーア司祭は、人々が長年の戦争の傷にまだまだ苦しんでいることを知っていましたので、オルガンの修復どころではないと理解していました。しかし、上記のシラ書のみ言葉を心に留め、人々に希望を与えよう、神様はまだいるということを人々に訴えるためにオルガンの修復に踏み切り、6節からなる作詞をしました。原語はドイツ語Stille Nacht(静かな夜)です。その詩には、「今日は父の愛の力が全て注がれ、イエス様は世界の人々を包み込む」というメッセージを乗せました。そして、友人でオルガン奏者である学校教師、Franz Xaver Gruber(フランズ・ザベア・グルーバー)に作曲を依頼したのです。1818年12月22日、モーア司祭はギターを、グルーバーはオルガンを担当し、音合わせをしました。その二日後のクリスマスイブ礼拝で二人は人々の前で初めてその新曲を演奏しました。Silent Night(きよしこの夜)が世に出た瞬間です。

 長い戦争で荒廃した町、貧困などの生活苦にあえぐ人々、水害に遭った教会のオルガン、そのような希望の見えにくい時、場所において、今日、シンプルながら世界でもっとも親しまれているクリスマス・キャロルが生まれたのです。まさに希望の勝利です。そして、クリスマスは変わることなく、どんな状況にあっても人々に希望をもたらすイエス・キリストのご降誕を祝う季節です。

 私たちは、それぞれ神様からの賜物に感謝し、神様の許しを心に留め、イエス・キリストに倣って、神様に従って生きたいと願います。一歩ずつでも、世界に希望の光が届きますように。

 Merry Christmas!


香蘭女学校チャプレン  マーク・ウィリアム・シュタール