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今年度第1回宗教講話は伊藤正雄先生の「被爆体験伝承講話」
香蘭女学校キリスト教センターが主催してキリスト教の柱に基づいた大切なお話を全校でうかがう機会となっている宗教講話。香蘭女学校ではずっと昔からこの宗教講話を続けてきています。「命・正義・平和・人権」をテーマに、1年に2回外部の方をお呼びしてお話しいただいています。
今年度第1回の宗教講話は6月12日の午後、全校生徒が集まる礼拝堂に伊藤先生をお迎えして、「被爆体験伝承講話」と題して行われました。
戦後70年が経過し、被爆者の高齢化が進んでいます。唯一の戦争被爆国として、被爆者の体験や平和への想いを次世代に語り継ぐために、広島、長崎では、被爆者から直接受け継いだ体験を語り継ぐ「伝承者」や、被爆者の体験記を朗読する朗読ボランティアの養成を行っています。今回お話しいただくことになった伊藤正雄先生は、1941年生まれで今年78歳。4歳の時に爆心地から3㎞の地点で被爆されました。
成チャプレンによる開会の祈りに続いて、鈴木校長から伊藤先生のご紹介がありました。そしていよいよ、伊藤先生のお話となりました。
お話の最初はお話の大前提として、広島の歴史、国家総動員法と学徒動員、建物疎開などの基礎知識を確認してくださいました。そして次に、昨年亡くなられた松原美代子さんの被爆体験を、松原さんが生前描かれた絵を中心にお話しくださいました。原爆投下当日のこと、その後の社会的差別・偏見との戦いについての辛いお話でした。
その松原さんの伝えてゆかなければという使命感を受け継いだ伊藤さん自身の体験についてのお話が次の話題でした。憎かったアメリカに対する感情が、アメリカ人との交流の中で聖書の「汝の敵を愛せよ」ということばを通して変化してゆき、17歳で洗礼を受け、60歳で原爆資料館に関わるようになり、そして憎しみを込める「Never Forget」から平和を祈る「Never Again」へ思いが深まっていったと、強いメッセージを投げかけてくださいました。
最後に核兵器禁止条約批准問題をお話しくださり、現在日本が抱えている大きな問題について丁寧に説明してくださり、私たちがどのような意識を持つべきであるかを提示してくださいました。
講話のあとは質疑応答の時間となりましたが、次々と出された生徒の質問に一つ一つ丁寧にお答えくださいました。
教室に戻った生徒たちが一生懸命振り返りを書いていたのが印象に残りました。生徒たちにとって自分自身の問題として原爆の問題を考え直す貴重なきっかけとなった今回の宗教講話でした。