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香蘭女学校創立130周年記念企画展に向けて(17)

1888年(明治21年)に英国国教会の宣教師たちによって建てられた香蘭女学校は、2018年に創立130周年を迎えます。
これを記念して、教職員、在校生、保護者、校友生をはじめ、香蘭女学校に連なるすべての方々が「香蘭女学校を再発見」できる場として、「香蘭女学校 創立130周年記念企画展(仮称)」を開催いたします。

来年の企画展に向けて、香蘭女学校の歴史についてこのホームページのトピックス上で、時折ご紹介してゆくことになりました。今回はその第13回です。

《香蘭女学校の歴史 13 白金三光町へ移る頃の授業の様子 ~生徒の生の声~》

麻布永坂の創立以来の校舎が焼失し、二年後に白金三光町に学校が移転したちょうどその頃、香蘭女学校の授業の様子紹介が毎年、学校の広報誌に活字になって掲載されていました。「本科三年生当番日記」と題されたこのコーナーには、次のようなリード文が付されていました。
「この日記は、本科三年生一同申し合わせ、第一学期より間断なく毎日当番を立てて書き続けるものの中の一部分なるが、修飾せず、忌憚せず、思う事を書きなせる、なかなかに趣味深き心地せらる、よりてこれを登載す。」
当時の香蘭女学校の生徒たちの生の声が聞ける貴重なコーナーだったようです。今回はそのごく一部をここに転載して、明治から大正へ移る頃の香蘭女学校の授業の様子をご紹介しましょう。
■(1912年)4月13日 土曜日 晴   当番 阿部八重子
第二時間 東洋史 齋藤先生
東洋史の御稽古も齋藤先生に教えていただくのもこの時間が初めてで御座いました。今日はまだ初めてだからとおっしゃって先生が本を読んで下さいました。そうして支那の舜帝が大変に孝行な人であったという面白いお話を伺いました。
第三時間 文法 富田先生
今日文法のあることを知りませんでどなたも本を持っていらっしゃいませんでしたからお稽古をすることが出来ず先生の御許しが出て一時間運動場で遊びました。春風は暖かく吹き渡り蝶々は花に近づいたり遠ざかったりヒラヒラと舞って居りました。誠に春らしい気持ちのよい日で御座いました。
第四時間 作法 堀先生
今日はお作法は致しませんでしたがその代わりに私共の言葉や行いについての有益な御話を伺いまことに嬉しく思いました。
■(1912年)6月11日 火曜日 曇   当番 田中つな子
今日は何となく気の進まない日でしたが今迄の晴々した日に馴れたためか殊更に嫌でした。そのために皆様眠そうなお顔をしてお稽古時間にあくびをしていらっしゃる方も多く見受けました。いつもの鐘が校内にひびき渡りましたので行く足も遅く手芸部のお祈室へ行きました。今日はいつも長橋校長の路加伝のお話がある筈でしたが質素にすること及び白粉をよすことについてのお話がございました。
第一時間 地理 牧野先生
今日の陰気に引き代え私共の始の時間には校中第一の快活との名が高い牧野先生のお稽古なので私共の教室だけには元気よいお声が溢れ今迄の嫌な感じは清涼剤をのんだ様に忘られました。独逸の住民から地方誌の半まで致しました。
第二時間 算術 高田先生
今日は三学年になってから初めての算術の試験なので皆様が一生懸命に温習っていらっしゃる御様子は大なる意気がおありになりそうに見えました。折よく一年の方は唱歌のため焼け残りの食堂の方へいらっしゃいましたので幸と一年の教室で致しました。総てで三題でしたが皆様終のには悩まされて居られる様でした。早く出来た方は小雨が降って居るのにもかかわらず外に出てお互いに結果を話し合って居られました。
第三時間 国語 齋藤先生
第十一課質素を前田さん、伊藤さんと私とで読み先生は我が国財政のことをお話しになり私等が質素という観念が脳裏に深く刻むようにお話しして下さいましたので心に何処までも質素にしようという覚悟を致した様な次第でした。
第四時間 化学 高田先生
第十節炭酸ガスの一の所だけ致しました。伺って居るのは嫌ですが化学は一時に多くの新知識が得られると思いました。外を職人が大木をヨッチョイヨッチョイとかけ声で通りました。独りひそかに笑う方も少なくありませんでした。少し早く仕舞て下さいましたのでこの時ばかりは殊更よい先生と思ったその間終の鐘はジャランジャランと鳴り渡りました。午後の休時間にはあちこちによってお話を致しました。
第五時間 修身 長橋先生
第六節納税のことを致しましたがなかなか難しい字が使用してございますのでそのお講義をくわしく黒板にお書きになりました。少し早く六節を致して仕舞いましたから一生徒の父兄から来た手紙をお読みになりそれについての感想をおのべになりました。
■(1912年)10月26日 土曜日 晴   当番 内藤正子
第一時間 作法 堀先生
まだおじぎのしかたが上手に出来ませんので一人ずつ出て致しましたが上手にお出来になった方が多かったので他のを習いました。それは 両陛下の御写真を拝すのです。二人ずつでお床間を見上げて最敬礼をするのです。それがお写真の無いお床を見上げるのですから何だかおかしゅう御座いました。もうあとお二人という時に鐘がなりましたのでおあずかりになりました。
第二時間 東洋歴史 齋藤先生
先生がいらっしゃったらすぐに今日は何だか参観者がいらっしゃった様子ですからそのつもりでいらっしゃいといって下さいましたので皆でそれではなるたけ読まさないようにとお願いしておきました。間も無く戸ががちゃんと音がして一人の男の方が牧野先生と御一緒に入っておいでになりました。丁度その時先生は八王の乱及び十六国の乱のお話の最中でした。後で伺いましたら大阪の或る学校の校長さんでありました。
第三時間 文法 富田先生
前に代名詞が終わりましたから今日は動詞の活用を習いました。ア段とかラ行とか言ってアイウエオを縦に読んだり横に読んだりしてすらすらに言うことの出来るようにしました。そしてこれはウ段であるとかこれはサ行とか言うのです。
第四時間 国語 齋藤先生
今日は鎮守の森を先生がお講義をして下さるはずになっておりましたので半分ばかりうかがひましてあまりむずかしいのでそれは後まわしにして乃木将軍をよんで講義をうかがいましたがこれもむずかしいので又よすことに致しました。

(写真は左上より、齋藤坦藏先生、牧野清子先生、高田理先生)

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